自分ではない誰かが言うことを、何故聞かなくちゃならないのか。
物事の善悪はわかるけど、兄弟だからとか親だからとかの理由で相手の言う事を聞くのはおかしい。
それは私が決める。
口数の少ない娘が訴えた。
兄の存在
幼い頃、些細なことで兄弟喧嘩をしていた。
どっちが先にお風呂に入るかや、外から帰ってきて手を洗ったのかどうかを確認するやりとり。
どこの家庭にもある問題。
「普段からいろんなことの面倒を見てもらっているんだから、お兄ちゃんの言う事を聞いておきなさい。悪いようにはしないんだから」と言う意味で発していたのだが喧嘩の詳細を聞いた後、娘は必ず言った。
「お兄ちゃんだからって、なんで言うことを聞けって言うの?」
「先に産まれただけでしょ」
兄の存在と社会的立場の理解不足が娘にはあった。
何度も訴える娘に、きちんと説明をしなければならない。
それは、本気で子育てをしている私に課せられた課題だった。
あやふやにして胡魔化しが効く娘でもないし、母として喧嘩のジャッジには〈平等〉を掲げていたからやるべきだ。
この世の決まり
「母の事はお空から見て、この人の子供になろうとお兄ちゃんと決めて降りて来たの」
「じゃ俺先に行くからってお兄ちゃんが勝手に先に行っちゃたんだよ。
なのに、ただそれだけで何で言う事を聞かなくちゃならないの?」
聞いてもいないのにそんな事を口にする娘に、説明した。
「この世ではね、この世のルールと言うか仕組みで動いているんだよ。先に産まれて来た人とか親やお兄ちゃんお姉ちゃんの言う事を、小さい内は聞かなければならないってね。だから、お兄ちゃんは威張っていろんなことを妹の貴方に指示するんだよ」
なるほどと言う顔をし同時に納得いかないが、でも仕方ないと言う顔をしていた。
付け加えたかった言葉もある。
「お兄ちゃんは、威張って言ってるけど妹を守りたいだけなんだよ。尊敬もして欲しい。けどね、恥ずかしくて言えないだけなの。」
この言葉は私が言って聞かせるのではなく、本人が感じとって欲しかった。
自分の立ち位置
自分の思う自分と、この世での自分。
難しい解釈を娘は幼稚園で会得した。
お兄ちゃんがいるんだね、と聞かれるからだ。
自分の経歴は妹。
これが今の自分の大問題。
だって、兄弟喧嘩で負けなくちゃいけないしお兄ちゃんの言う事を聞かなくちゃいけないんだもん。
自分の立ち位置は自分の思いとは何の関係もなくついて回るもの、この現実に納得はいかない。
生き方
この事実を受け止めて生きる。
それは、オリジナルの自分を探すことの始まりだった。
この世での自分の構成。
他者が自分のことを見る視点に兄の妹がある。
さあ、妹の自分ではなく私はどうなのか。
自分が思う自分になるために、娘は迷い立ち止まり引き返しもした。
しかし、やっと兄から離れ一人旅に出た。
21歳になっていた。
まとめ
- 兄と言う存在の定義
- 自分の立ち位置
- オリジナルは社会的立場の上に存在する
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